サイコ野郎の日本株投資日記

25歳で株を始めた男の備忘録

[書評]海賊とよばれた男

最寄りの図書館が長期休館になるという事で、まとめて本を借りに行った。

 

 

窓際の自習スペースには、中高生がテキストを広げて頭を抱えている。

 

彼らの姿に当時の自分を重ねてみると、やはり若干の後悔の念が想起された。

 

高校時代は運動部に所属して、3年の秋まで練習も欠かさずに参加していた。

 

勉強は後悔しないようにと出来る限り真面目に取り組んでいたと思う。

 

高校時代に部活で鍛えていなかったら、今の自分のバイタリティはないと言えるだろう。

 

ただ、こうして図書館に通っているとつくづく思う。

子供の頃から良書に巡り会えていたなら、心のエンジンのかかり具合が全く変わっていただろう。

 

勉学にしても、運動部にしても、継続して取り組まなければ成果は出ない。

 

継続して物事に取り組むには、長期の計画が必要だ。

 

電通では、次のとおり社是が掲げられていた。(社員が亡くなり、働き方改革の火種にもなったあの電通の社是)

鬼十則

「計画を持て、長期の計画を持っていれば 忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる」

 

当然、高校生が人生ベースの計画を持つのは容易な事ではない。いわゆる一生を賭してでも叶えたい夢を若いうちに掲げるのは困難な事だ。

 

ただ、読書は、長期の計画を定めるのには非常に有効である。

 

良書を通して過去の偉人や業績に触れ、感化されると、それは憧れになり、やがて長期の計画なることがある。

 

計画を持った人間には胆力が生まれ、工夫をするようになる。自分で考える力が付く。

 

教育行政で話題になっているアクティブラーニングにまで話が広がってしまうので、この辺で前置きを終えるが、とにかく良書に巡り会った人間には、心のエンジンにたくさんのガソリンが入る。

 

今回読了したのは、石油に人生を賭けた男物語。「海賊と呼ばれた男」だ。

 

出光の創業者として知られる出光佐三(国岡鐵造)が、戦後日本を駆け抜けた物語。

 

ストーリーを端的に書くと、戦後日本の復興のために、石油がまだメジャーでなかった時代から叩き上げで会社を興し、やがて西欧列強の大手石油会社からも怖れられるほどの大企業にまで「国岡商店」を大きくした創業者の物語だ。

 

 

この国岡鐵造のスケールには驚きを禁じ得ない。まさに長期計画の鬼であり、資源貧困国の日本において、将来を見通して精力的に働いた彼の人生は、なぜ今まで小説になっていなかったのか不思議である。

 

 

一公務員の立場から読むと、官公庁と国岡が争う場面が多く、営利企業の国岡商店の方が、通産省をはじめとした省庁よりも国益を考えて行動している点が印象に残った。

 

 

 

 

自分も仕事においては、県民のために今の仕事が役立っているかという視点を忘れないようにしているけれど、本書は時として行政が誤った方向に舵を切ってしまうことを、見事な切り口で描写している。

百田尚樹の語彙力、文字の力強さは申し分ない。

 

 

本書のキーワードになっている人間尊重という相互信頼の大切さはありとあらゆる物事に当てはめて考えることが出来ると思う。

 

自分はいかんせん性悪説に立って行政事務を行うことが多いが、本書は自分の仕事の取り組み方に再考の契機を与えた。

 

 

 

長々と書いたが、兎に角、心の石油が足りてないビジネスマンにはオススメの作品である。